No.60 2007.4.11
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□ 能登半島沖地震風評被害研究コラム
ゆざわ観光情報学研究会 主査 岸野裕
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■ 能登半島沖地震風評被害研究コラム
ゆざわ観光情報学研究会 主査 岸野裕
風評被害対策が日々どのように推移していくのかを研究するため
に、3月25日に発生した石川県能登半島沖の地震に関連する、
ホームページや新聞記事などを北大の学生さんや長尾先生にお手
伝いを頂き、3月26日~4月9日までの15日間にわたって、
収集してきました。
そこで今回、この収集作業を通じて風評被害対策について私が感
じた事をお伝えしたいと思います。
あくまで私見ですので異論反論あるかと思いますが、今後の参考
程度になればと思います。
まず今回の作業のきっかけは、能登沖地震に関連して私のお客様
や知人・取引先などから「大峰山荘は大丈夫?」「岸野のところ
は被害はなかったか?」と言う問合せが、地震発生後2時間以内
に5件程入ったことからでした。
首都圏の人から見ると、新潟も富山も石川もすぐ近くに感じてい
るからなのか、または新潟県内でも震度5弱を観測した地点があ
ったり、越後湯沢に隣接する十日町市で重傷者が1名出たり、上
越新幹線や在来線のほくほく線・上越線が一時運転見合わせにな
ったりしているTVニュースが流れたことから、「もしや湯沢も」
と思うのも無理はないと思います。
前回までの研究で確認したのは「地理的錯覚」と「情報誤認」が
風評被害を生むと言うことでしたが、まさにそのものズバリです。
さて、データ収集をしているときの感想を時間を追って順に書か
せて頂きます。
読みにくいかもしれませんがご容赦ください。
作業1日目
1次被害を伝える記事ばかり。
経済的な2次被害についての記事はなし。
作業3日目
加賀市では25日から更新が無く、殆んど被災していないようで、
その中の文章に「余震なども体に感じることはありません」とし
ていますが、その根拠(震度表など公の数値)が示されていない
為、逆に不信感をかってしまいそうなものもありました。
作業4日目
周辺自治体では対策・警戒本部が解散するなど、ホームページで
の変化が少なくなってきました。どちらかと言うと、被災地への
支援体制や義援金募集にシフトしています。
作業5日目
30日に入ってから旅行代理店のHPに動きが見られました。
石川県内の地震情報が大手一斉に掲載されています。
被災している七尾市や輪島市では道路状況などをマップにして、
市へのアクセスについて発信し始めると同時に、被災地と同じ市
内にある和倉温泉や片山津温泉のHPでは観光地は通常営業であ
るとして地震による悪影響を抑えようとしています。
しかし、甚大な被害が発生した地区とは違うとは言っても同じ市
内にあることや、いまだ強い余震が発生している事を考えると、
これはもはや風評被害と言う枠では無いと、個人的ですが考えて
います。
風評被害と言う点から見れば、金沢市内や山中温泉・山代温泉な
どは地理的にも能登半島から離れていて被害も殆んど無いと言う
ことですが、同じ石川県内であることや、石川県庁のWebカメ
ラがとらえた地震発生時の激しい揺れを全国版のTVニュースで
放映されたということもあり、風評被害に最も警戒しなければな
らない地域だと思います。
金沢市観光協会や山中・山代温泉のHPにも「通常営業・地震の
影響は無い」としていますが、金沢市や加賀市のHPには被災状
況が掲載されているなどの食い違いもあり、お客様の不安を払拭
するだけの材料(科学的根拠)が示されていない為、今後それが
どのように影響するか非常に興味深いところです。
首都圏、大阪圏などの石川県内の観光地を利用するお客様が多く
住んでいる場所の駅や道路そして旅行代理店の石川県方面への旅
行に関する情報発信がどのようになされているかを確認しておき
たいところです。
作業7日目
金沢や山中・山代の風評被害が懸念されます。
地元自治体の災害情報と同期を取りながら、被災地への配慮や支
援もしつつ、強い余震が終息した頃を見計らって科学的根拠に基
づいた早期の安全宣言とTVや新聞などのマスコミを利用したP
R活動が必要になってくると思います。
気を付けなければいけないのが、余震が続いている中、あまりに
も早い段階で科学的根拠も示さずに安全宣言をしたり、被災者・
被災地への配慮に欠けたPR活動をすると反感を買い、風評被害
以上の逆効果になってしまいます。
(新潟県でも妙高温泉の対応が早すぎて反感を買ってしまい、お
客様の予約回復が越後湯沢に比べてかなり遅れたと言う事例があ
ります)
自分の経験則から考えると、
初期段階:被災者救援
終息段階:災害復旧支援、被災者支援、風評被害対策
安定段階:産業復興
と言うのが活動の優先順位だと思います。
被災していない観光地の人達が、被災した人達への支援を、現段
階でどの程度しているのか。どうせ宿や飲食店はキャンセルが入
って閑散としているのであれば腹をくくって協会単位・組合単位
で大規模に被災地へボランティアとして赴き、積極的に救援活動
をする。そんな姿勢をお客様は評価してくれます。
事実、越後湯沢はそうした活動をしていたためマスコミに大きく
取り上げてもらい、震災発生から2ヶ月でV字回復を果たしてい
ます。
======================================================
【キャンセル率】
地震前の予約数に対する地震後のキャンセル数
※予約数を100としてキャンセルが100ならキャンセル率100%
【新規予約率】
収容人員に対して地震後に受けた新規の予約人数
※収容人員を100として予約人数が100なら100%
======================================================
の情報収集が欲しい。
作業9日目
いよいよHP更新の動きが少なくなってきました。
一部、輪島市で動きがみられます。
観光施設や宿泊施設の営業状態を掲載しています。
※28日頃から掲載していたようですが、HPの下方に掲載されてい
て気が付きませんでした。
「石川はがんばって営業しています!」と言う風評被害対策のホ
ームページが28日頃から出ていたようですが、残念ながら今ま
で発見出来ていませんでした。
石川県の観光推進課のホームページの中を探っていったら、およ
そトップから4階層下にあったのを偶然見つけました。
これが、県HPのトップにあればよかったのにと言う感想です。
作業10日目
また、湯沢温泉旅館組合が石川県旅館組合とメーリングリスト等
で風評被害対策について連絡を取り合っていると言う話しを耳に
しました。
早い段階で風評被害対策を念頭に入れた案内が各HPに掲載されて
いたのも、そう言った動きが関連しているものと推測されます。
金沢市内では風評被害どころか、復興のための役人や調査員、ボ
ランティアの拠点としてホテル利用者が増えているとの情報もあ
ります。
作業11日目
いよいよ被害状況を伝えるだけの更新になってきており、風評被
害対策になるような関連の更新はなくなってきました。
そこで、本日の更新分ではないのですが、風評被害について書込
みがあった個人的なブログを幾つか収集してみました。
作業12日目
そろそろ情報収集も終わりにして、今回収集した情報と、現地で
の(データ収集が可能であれば)キャンセル・新規予約状況など
のデータを分析してみたいと考えています。
作業13日目
越後湯沢では、大きな風評被害と言うものはありませんでしたが、
一部のホテル・旅館でキャンセルも発生した事が確認されました。
(地震が理由でキャンセルされたのは町全体で3件25名程度)
しかし地震発生翌日には、震度2で物的・人的被害がまったく無
いと言う事実をHPに掲載したことや、新幹線・在来線が正常運
転したことで被害拡大は無くなったようです。
以前から薄々感じていた事ですが、被害が甚大で状況が把握でき
ない被災地域の様子よりも、大きな被害が無く状況が把握しやす
い周辺地域の様子を、大規模自然災害発生のニュースと同時に報
道してしまうことで、それを視聴した人が勘違いをしてしまいそ
れが風評被害を招いているような気がします。
風評被害の発生源は新聞雑誌を含む「マスコミ」ではなく、速報
性が高い「テレビ・ラジオ」が発生源ではないかと思います。
石川県内や富山県内の風評被害状況はどうなんでしょうか?
作業14日目
被害が大きかった七尾市(和倉温泉)を除いて、大きな動きがな
いので、現在営業をしていない和倉温泉の旅館のHPを収集してみ
ました。
昨日に引き続き本日も、各HPとも細かい数字などの更新だけで、
大きな動きがありませんので収集はしておりませんが、Yaho
o!ニュースに「風評被害」を発見しました。
読売新聞記事です。
中越大震災の時もそうでしたが、地震発生から2週間が経過し、
ようやく風評被害の実態についてマスコミが取り上げ始めたと言
うところでしょうか?
キャンセルは予約の9割、人数7万人、と言う規模は、中越大震
災の予約の8割~9割がキャンセルで、人数31万人超と比較す
るとかなり小さいように感じられます。
(数値の根拠:新潟日報朝刊2004年11月16日(火))
直接被害の無かった加賀・小松周辺でのキャンセルは3千人程度
だと言う事で、中越大震災の風評被害は30万人超(被災地は観
光地が少なく、被災地のキャンセルは1万人)ですので、それほ
ど大きな風評被害は発生していない様子ですね。
それが季節的なものなのか、あるいは風評被害対策(HP掲載な
ど)が功を奏しているのか・・・・想像しかできません。
なによりも、分析には前年比較のデータが欲しいところです。
今回自分なりに判ったこと。
1.被害の少ない(あるいはまったくない)地域の情報収集の方
が早いため、そのソースを基に流されるTV・ラジオのニュ
ースの速報性が仇になり、誤認が発生し風評被害が発生する。
2.風評被害と実害の境界線があいまい。
収集したHPを見ると、実害のあった七尾市(和倉温泉)や
輪島市(門前町)の予約キャンセルも「風評被害」として扱
われている。
「風評被害」と言う言葉の独り歩き?拡大解釈?
風評被害と言うものの定義を決める必要がある。
3.風評被害の規模を図る方程式が存在しない。
4.風評被害の公式数値を収集する機関が存在しない。
5.被害の程度にもよりますが、風評被害のことをマスコミが取
り上げるのは災害発生から2週間程度経過してからである。
今後も研究を続けていきます。
以上。
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□国内の動向
観光と情報に関する話題を紹介します.ここで紹介した話題がござい
ましたら,編集担当(hajime@do-johodai.ac.jp)までご連絡ください.
(掲載の判断は編集担当が行います.商業目的のダイレクトメール,
もしくは,それに類する内容は掲載できませんので,あらかじめご承
知おきください.)
"サーチナ、中国語ウェブサイト「日本頻道(ジャパンチャンネル)」の運営を開始"日経プレスリリース
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=157357&
"ニセコや函館のペンション 周遊プラン、HPで発信"北海道新聞
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/economic/18032.html
"携帯電話で観光情報 氷見商工会議所 QRマップを作成"富山新聞
http://www.toyama.hokkoku.co.jp/_today/T20070405204.htm
"インクルーブ、箱根の観光情報をフリーマガジンで発信"日本経済新聞
http://www.nikkei.co.jp/news/retto/20070402c3b0204o02.html
"次世代無線通信実験へ 福井CATV 全国初、フルHD映像伝送"福井新聞
http://www.fukuishimbun.co.jp/modules/news2/article.php?storyid=530
"携帯電話でサイト作成 2サービス販売を開始 フェアアシスト"茨城新聞
http://www.ibaraki-np.co.jp/main/weekly05.htm
"観光案内もモバイル化 52か所にQRコードで"房日新聞
http://www.bonichi.com/modules/dnws/item.php?iid=2308
"沖縄に特化した初の歯科ポータルサイト - 医療サービス向上に貢献"那覇経済新聞
http://naha.keizai.biz/headline/105/index.html
"携帯電話用HP開設 日高地方の観光地紹介"紀伊民報
http://www.agara.co.jp/modules/dailynews/article.php?storyid=122739
"能登半島地震、風評被害払拭へ全力---地元観光業界"観光経済新聞社
http://www.kankoukeizai-shinbun.co.jp/backnumber/07/04_07/chiiki_kanko.h...
"鳥取県ネット物産展は大収穫"中国新聞
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn200704060088.html
"[長野]北アの情報を集積 日本アルプス観光連盟共通のHP開設"東京新聞
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