No.143
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■ 観光情報学会 Mail NEWS ■
━━━━━━━━━━━━ www.sti-jpn.org ━━━ 2011.6.23 No.143
■ 第8回観光情報学会全国大会 ルポ
平成23年6月11日,第8回観光情報学会全国大会が,北海商科大学の伊
藤昭男先生をはじめとする東アジア観光情報学研究会の方々がホストと
なり,「地域ツーリズムと東アジア連携」をテーマに開催されました.
とくに,今回の全国大会は震災後の開催ということもあり「震災後の影
響と道内観光産業の振興プラン」と題したワークショップも行われまし
た.
全国大会は,前半の口頭発表をからはじまり,開会式では,北海道観
光振興機構会長の坂本眞一氏の代理で,同専務理事の北山憲武氏が挨拶
されました.北山氏は観光情報学会の創立時よりご尽力いただいており,
観光情報学会に対する思いと期待をこれまでの活動を通してお話いただ
きました.また,札幌市観光文化局よりコンベンション部長の小笠原氏
より,「YOSAKOIソーラン祭りで盛り上がる北海道にようこそ」とのご挨
拶を,さらに,北海学園理事長・北海商科大学長の森本正夫氏より,学
術分野における「観光」について,その歴史を踏まえ,ご挨拶をいただ
きました.
続く,講演会では,台北駐日経済文化代表所札幌分所長の徐瑞湖氏よ
り,「北海道と台湾の交流について」ご講演いただきました.先ず,台
湾と北海道の歴史と絆について,新渡戸稲造や川上滝弥等,札幌農学校
の卒業生の台湾での活躍を通してお話いただきました.また,台湾の観
光名所を数多く紹介いただき,その上で,北海道の観光産業に対して,
台湾の富裕層は「ゆっくりしたい」というニーズがあるので,チェック
イン時間をもっとフレキシブルに設定できるようにする,特区としてロ
ングステイビザを発行する等の多様化・多目的化に対応する必要がある
のではないかとの提言がありました.徐氏の講演に対して,北山氏より,
今回の震災で160億円程の支援を台湾から受けていること,台湾からいち
早く北海道に観光団が来てくれたこと等が紹介され,台湾へ300名を超え
るツアーを計画し,恩返しをしたい旨のコメントがありました.
後半の口頭発表を挟み,ワークショップ「震災後の影響と道内観光産
業の振興プラン」が行われました.パネラーには,松原会長を始め,北
大メディア・コミュニケーション研究院より,伊藤先生,宮部先生,北
見先生,観光情報学会名誉会長でもある北海商科大学の大内先生,北海
道情報大学の長尾先生,そして,北大情報科学研究科の川村先生により
行われました.北大,内田先生のコーディネートにより,ワークショッ
プが開始され,先ず,松原会長より,ワークショップの開催趣旨につい
て,また,6月24日開催のはこだて観研のシンポジウム「大震災と可能の
将来」についての紹介がありました.
続いて,宮部先生より,震災直後より行われた「道内産業における東
日本震災と道内観光産業調査」についての速報がありました.道内観光
事業者へ約500件,一般消費者への約1000件の調査により,観光事業の深
刻な売り上げ減の現状と同時に,観光事業者が売り上げの落ち込みの原
因を,消費者の消費マインドの自粛にあると考えていることに対し,一
般消費者は既に旅行に目が向き始めているという,双方のギャップが明
らかになってきているとの報告がありました.
続いて,長尾先生より「観光と風評被害」に関する研究について,こ
れまでネットニュースに対するテキストマイニング等の情報科学的アプ
ローチで分析した風評被害の発生のプロセスを,新潟中越沖地震の事例
をもとに解説いただきました.大内先生は,今回の東日本大震災では,
事実を事実として伝えていないことから,単に風評被害として扱ってし
まうことについて疑問が投げかけられ,放射能汚染に対するドイツの気
象サービスによる情報提供の例を示し,事実を事実として伝えることの
重要性とともに,情報の送り手・受け手の「インテリジェンス」の必要
性を訴えました.
最後に川村先生により,ソーシャルメディアを観光復興プランにどの
ように生かすのかについて,北海道観光に関する情報発信が,「観光業
界と観光客の緩い連携」や「粒度の異なる情報の存在」により,「北海
道はよかった」という一つのコンテクストに埋め込まれてしまう危険性
を示唆,ジャスミン革命やハイチ地震におけるソーシャルメディアの影
響等の背景を踏まえ,twitter等のSNSで北海道観光に関わる公式のタグ
の設定等,効果的な活用について提案がありました.
このように非常に充実した内容で盛り上がった第8回の観光情報学会
全国大会も,最後の総会をもって無事に終了しました.実行委員の方々
に改めて感謝申し上げます.(総会の内容についてはMailNews No.142で
配布した議事録を参考ください.)
尚,ワークショップに関連し,観光情報学会では,引き続き,震災と
観光復興について下記のシンポジウムでも議論を続けて参ります.興味
のある方は是非,ご参加ください.
○未曾有の震災を乗り越えるには―観光と交通インフラの課題を考える
~大震災と観光の将来~
会期:2010年6月24日(金) 14:00~17:00
会場:函館市中央図書館
案内リーフレット:
http://www.sti-jpn.org/sites/default/files/624Chirashi.pdf
○震災後の影響と道内観光産業の振興プラン
~ 北海道観光産業にいま必要なことは何か? ~
会期:2011年6月25日(土) 13:30~17:00(13:00受付開始)
会場:北海道大学学術交流会館2F 大講堂
案内リーフレット:
http://www.cats.hokudai.ac.jp/~uchida/news/20110625sympo.pdf
報告 北海道情報大学 情報メディア学部 准教授 斎藤 一
━企業・団体会員リスト━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【団体会員A】
(株)HBA
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(株)日立東日本ソリューションズ
(株)北海道新聞社
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(株)リクルート北海道じゃらん
北陽ビジネスフォーム(株)
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