札幌彫刻美術館友の会と“Hokkaido Sculpture-Web”

札幌彫刻美術館友の会 会長
橋本信夫

札幌に生まれ、日本の近代彫刻をリードした偉大な彫刻家本郷新を記念 して1981年に財団法人札幌彫刻美術館が設立された。友の会も同年「札幌彫刻美術館の事業活動の進展に寄与するとともに、彫刻美術の鑑賞・研究を通じて 会員の教養を高め、もって彫刻文化の向上に資する」ことを目的に設立され、今に至っている。現在、会員数は約120名で会報「いずみ」を発行し、彫刻美術 館と市民をつなぐボランテア組織として草の根的な支援活動を行っている。

こうした中、北海道では150有余年にわたる開拓の歴史の 様々な機会に夥しい数の野外彫刻が各地の公共の場に設置されてきた。しかし、残念ながらこれらの造型作品に関しては、これまでまとまった資料を備えた窓口 が行政機関も含めてどこにもなく、その全貌については手がかりさえも得られなかった。こうしたことから会員の仲野三郎氏が1985年以来約20年をかけ て、道内各地の野外彫刻の設置状況をくまなく調査することを思い立ち、これまでに約2、100点余(全体の95%以上)の彫刻写真(約10,000枚)や 資料が収集されて詳細な基礎台帳(彫刻の戸籍)が作成された。

これらの野外彫刻の多くは永く風雪に晒されながらも地域住民の手厚い 保護を受けて今も燦然として輝いているが、中には補修もされず、存在さえ気付かれることなく朽ち果てつつあるものもある。また、各地に次々と新しい芸術作 品が設置されながら住民の関心の有無、維持努力、PR方法などによってその後の運命は様々である。いずれにしても北海道全域に散在する個性豊かな野外彫刻 が、それぞれ四季折々の美しい自然環境を背景に独特の風情と存在感を示すその素晴らしさは、美術館の収蔵作品とは大きく趣を異にしている。

このたび北海道大学大学院工学研究科(平成16年4月より情報科学研究科)の大内東教授の研究室によって仲野三郎-野外彫刻写真コレクションが Hokkaido Sculpture-Web として概要設計され、公開の道が開かれた。これによって全国の美術フアンに道内の彫刻が紹介され、観光資源としても注目されるのは友の会にとっても望外の 喜びである。北海道には彫刻家が多く、各地にアトリエを構えて旺盛な創作活動を行っている。特に来年は、本郷新の生誕100周年を迎えるだけに、これらの 野外彫刻画像が今後情報工学の先端技術と組み合わされ、道内各地の美術館、ギャラリー、アトリエ、パブリックアーツなどを結ぶ「北海道彫刻ロードナビ」と して美術ファンや観光客に広く利用されたとき、彫刻美術館の来館者も自ずと増えるに違いない。

□著者紹介
橋本信夫  (Nobuo Hashimoto)
生年月日  1932年11月29日

年 次  学歴と職歴
1955 北海道大学獣医学部卒業
1957 北海道大学大学院獣医学研究科修士課程終了
1957 札幌医科大学助手(衛生学 ポリオウイルスの研究)
1962 ニューヨーク市公衆衛生研究所(留学、ウイルス遺伝学)
1964 札幌医科大学講師(衛生学、アルボウイルスの研究)
1972 ニューヨーク血液センター研究員(B型肝炎ワクチンの開発)
帝京大学医学部助教授(兼任 衛生学)
1975 リベリア共和国立医学生物学研究所派遣
(ニューヨーク血液センターVilob II所長:B型肝炎ワクチンの開発・研究)
1977 北海道大学獣医学部教授(獣医公衆衛生学)
1996 定年退官 北海道大学名誉教授   現在に至る

(動物のお医者さんの漆原教授のモデルとしても知られています.)

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