大会後記 観光情報学会 第2回全国大会パネルセッション1『観光と地域経済~データでみる観光~』

琉球大学工学部情報工学科助手 當間愛晃 (非会員)
お世話になっております.全国大会事務局の當間です.大会後記と題して雑感を交えつつご紹介する形式で進めて行きたいと思います.

<大会全体を通して>
合 い言葉は「一にも二にも時間との勝負.時間厳守」.大会案を練りだした段階では一般講演+パネルセッション2~3件程度であったプログラムが,最終的には これほど にまで膨れ上がりました.「観光と情報のシナジー」という大会テーマに名前負けする事無く,特別講演とパネルセッションだけでも
・データに見る民間・学の立場から見据えた観光業界の将来
・官の立場から掲げる目標と現状
・新しい形の企業を作り上げる必要性
・風評被害とその対策
・電子マネーを取り巻く将来像
と いった,極めて興味深いテーマについて最新の情報と意見とが飛び交いました.その上,もう一方の主役である一般講演・一般展示を実施していることもあり, 全体的にタイトなスケジュールとなってしまった点は残念で仕方がありませんでした.一方,概要を掲載した 予稿集 は勿論有益な情報源足るわけですが,当日ご参加頂いた皆様にはその会場でしか得られなかった貴重な意見が数多くあった事が明らかでしょう.本記事では忘備 録を兼ねて,参加する事の出来なかった皆様に少しでも有益な情報を提供する事が出来ればと思います.

<パネルセッション1:観光と地域経済~データでみる観光~>
各パネリストが独自の理論で統計データへ解釈を与え,観光産業の将来について語った.

譜久山當則 氏  (沖縄振興開発金融公庫融 資第一部長)
北海道・沖縄・八重山の3地域について,観光業と地域経済との関わりを事業所数・域内総生産・観光客数といったデータより沖縄・八重山に置けるサービス業 の強さを示した.その上で,10年間の旅行の動向より,沖縄・八重山における観光客数には特徴的な伸びがあり,その要因として周遊型(団体旅行型)から体 験・滞在型(グループ・個人旅行)への旅行形態の変化と,提供していた地域資源とがうまくかみ合っていた点を指摘し,今後も地域資源を活かしたアピールが 重要であると述べた.

渡久地明 氏  (観光速報社 編集長)
過去30年分の延べ観光客数推移データに対し,客数の推移に は明らかな原因があると述べ,最も妥当と思われる要因の一つとして「観光客数(需要)と受入能力(供給)の推移」を紹介した.客数が伸び悩んでいる時期に はホテル等の施設供給不足という背景があり,需要と供給とは二重螺旋を描くように右肩上がりに増加していることをデータで示した.シミュレーションによる と2018年頃には観光客が1千万人に達するが,その過程で雇用者問題も十分解決出来るほどの創出が見込めると述べた.

大城 肇 氏  (琉球大学法文学部 教授)
観光の経済効果を分析するにあたり,観光需要を核とした複合産業群を考慮する必要があり,観光に伴う消費がどのような波及モデルでどこにどの程度の効果を 与えるのかという観点だけではなく,分析そのものに必要なデータを得られる事が重要であると述べた.また,観光客数の短期的な予測法として,沖縄県総人 口・国内総生産・観光消費額・収容人員といった変数を利用したマクロ計量経済モデルであるREF(琉大経済予測)model により予測を行い,2005年度の観光入域客数は 5,487 千人,実質観光収入は 436,283.9 百万円程度と試算された事を報告した.

以 上の報告を受けて,会場からは『単純に客数が伸びても収益が伸びないのでは本末転倒であり,観光客の入り込み数だけを見ても意味が無いのではないか? 重 要なのはコンテンツ作りや PR 活動に励み,客単価を上げる事ではないのか』との指摘が出た.これに対し,渡久地氏は「質を高めるための努力は当然重要だが,質に特化しすぎたアプローチ は危険である.まず供給を増やし,その上で多種多様な営業努力をする事が重要だ」と答えた.司会者の遠藤聡志氏(琉球大学工学部教授)からは,おきなわ観 光情報学研究会にて運営しているMLにて同様のトピックについて議論が行われ,「まずは供給を整えることが重要だとの共通認識に至った」とまとめた (*1).

(*1)MLにて同様のトピックについて議論が行われた.
MLにおける議論については
http://www.eva.ie.u-ryukyu.ac.jp/~tnal/kanko/ にて紹介しているので,興味のある方はご覧下さい.

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